「もう消えたいんですけど」。誰かが書き込むと知らない誰かが応える。「起きてると辛(つら)くなるからゆっくり休んでね」。心を病む人が集い、病状や処方薬の情報を交換するインターネットの「メンタル系サイト」。ハンドルネーム・ロボ(41)のサイトもその一つだ。うつ病と診断されて12年、診療所を転々とした。「いつまで薬を飲み続ければいいのか」。ロボの書き込みに目が留まり、取材を申し込んだ。

 東京都内の心療内科にかかったのは、企業のシステムエンジニアをしていた98年。不況のさなか、自殺者が3万人を初めて突破した年だ。深夜勤務が続き、不眠に悩んだ。医師は抗不安薬3種を処方した。不調を訴えると効き目の強い薬を次々に出され、7種類に増えた。緊張や不安は治まらない。持ち帰る薬の袋だけが膨らんだ。

 03年に千葉県へ引っ越し、診療所も転院した。待合室はいつも満席で2時間待ち。「調子はどう」「薬出しときます」。診察は1分で終わる。相談したいことがあっても医師は「大変だね」としか口にしない。

 欠勤が続き会社を解雇された。再就職活動でうつ病と打ち明けたことがある。「君、廃人だな」。不採用通知が届いた。2年後に就職できたシステム会社でもたびたび欠勤した。父は「ぜいたく病だ。明日から仕事に行け」と言う。行きたくても体が動かない。ため込んだ処方薬200錠を口に放り込んだ。目が覚めたのは、集中治療室から病棟に移った2日後だった。

 退院後、かかりつけの診療所の医師は「自殺を図るような患者はもう診ない」と告げた。医者なんて頼れない。処方せんさえもらえればいい。そう割り切り、診察を続けてもらえるよう頭を下げた。同じ病のネット仲間だけが支えだった。

  ◇   ◇

 04年春、関西に住む一つ年下の介護士の女性がサイトを訪ねてきた。ロボが自殺を図った日、同じことをして入院したという。うつ病になってからも激務が続き、一人病と闘っていた。「ここに来て友だちがいっぱいできたよ」。そう喜ぶ彼女と付き合い始め、東京で2回デートした。1年後、突然目の前から消えた。向精神薬を大量に飲んで意識が戻らなかった。

 女性が懸命に生きてきたことを知っていた。だから彼女の分まで生きようと思った。近所にできたクリニックを受診した。これまでと違う医師の助言を聞きたかった。女医は処方薬の多さに驚いた。長年服用した薬を急に切ると心身の負担が大きい。「少しずつ減薬していきましょう」。医師が話に耳を傾けてくれたのは初めてだった。4年たち、初めて薬を1錠だけ減らせた。

 私はロボが住む街を歩いた。駅前のあちこちに精神科診療所がある。処方薬を大量に飲んで救急搬送される患者が絶えない診療所があると聞いた。院長は取材に答えた。「他の病院で私の評判が悪いのは知っている。でもそれは、過量服薬するような患者をやっかい払いしないで、すべて受け入れているからだ。医者の哲学として。だから(治療に)失敗しても試行錯誤しながらやっている」

 この日診療所には200人以上が訪れた。その手に処方せんを握り、再び街に消えていく。医者も患者も出口の見えないあい路をさまよっているようだった。

 病んだ心を誰が救うのか。自殺者3万人時代。ロボもその一人になっていたかもしれない。

  ◇   ◇

 ロボのハローワーク通いは続く。気持ちが落ち込み、しばらくネットの更新を休んだ。目が覚めてカーテンを開けるとマンションの間に朝焼けが広がる。もう一度、元気に働きたい。

 「ロボ、大丈夫?」。久しぶりに開いたサイトに誰かの書き込みが並んでいた

 

※毎日新聞 2010年6月24日 東京朝刊

4万人に1人の割合で発症するといわれる難病「ポンペ病(糖原病2型)」。この病気をめぐる実話を基にした米映画「小さな命が呼ぶとき」が7月24日から全国で公開されるのを前に、北海道在住の患者、吉田彩芽君(10)と両親が東京都内で会見し、病気への理解を求めた。

 ポンペ病は、グリコーゲンを分解する酵素の一つが生まれつきなかったり不足したりして筋力が低下する先天性の病気。国内で診断された患者数は六十数人といわれる。発症する時期には乳児から成人まで個人差があり、乳児期に発症すると心肺不全で1歳までに死亡するケースが多い。映画は、ポンペ病の子どもを持つ父親が自ら治療薬を開発する会社を設立する物語で、モデルとなった会社が開発した薬は世界中で使われている。

 3歳で筋ジストロフィーの疑いを指摘され、5歳の時にポンペ病と診断された吉田君は「小学校1、2年生の時は50メートル徒競走で最後まで走れず、歩いてゴールしたが、(薬の投与後)走れるようになった」と話す。父尚史さん(36)は「医療関係者の間でもまだこの病気が十分に知られず、ポンペ病と分からないまま亡くなる人もいるようだ。映画を通じて多くの人に知ってほしい」。母香澄さん(33)も「私たちも(病気の)情報を発信することで、ポンペ病かもしれない患者さんの命を救う力になりたい」と話した

 

※毎日新聞 2010年6月25日 東京朝刊

DHCは、カルシウムとホエイたんぱくのCBPが一緒に摂取できるサプリメント「カルシウム+CBP」を発売した。CBPは牛乳や母乳に含まれ、カルシウムと一緒に摂取すると、カルシウムの働きを高める効果があるという。CBPは生乳に0・00015%しか含まれておらず1日3粒飲むと牛乳8リットル分のCBPが摂取できる。90粒入りで420円。

 

※毎日新聞 2010年6月21日 東京朝刊

セイコースポーツライフは美容と健康をテーマにした新たなスポーツサングラスブランド「ソレイユ」の商品を6月下旬から発売する。ゴルフ用のサングラスは帽子やサンバイザーに簡単に装着できるようにして効果的に紫外線対策ができるようにした。指1本でサングラスを上げることもでき、サングラスを使う時と、使わない時を簡単に切り替えることができる。サイズと色別に5種類あり、1万1550~1万2600円。

 

※毎日新聞 2010年6月21日 東京朝刊

ペットとふれあう中で感染し高熱などの症状が出る「ペット感染症」。感染を放置すれば重症化したり、場合によっては死に至る場合もあるが、飼い主にその存在はなかなか浸透していないのが現状だ。ペット病にはどのようなものがあり、感染を防ぐためにはどうすればいいのか。適切なペットとの付き合い方も含め専門家に話を聞いた。【曽根田和久】

 ペット感染症に詳しい公立八女(やめ)総合病院(福岡県八女市)の吉田博企業長(内科)によると、動物から人に感染する「動物由来感染症」は世界で約150種類が知られている。日本国内では腸管出血性大腸菌感染症など約50種類が確認されており、うちペット感染症は約30種類と半数以上を占める。

 ■猫ひっかき病

 このうち感染者が最も多いとみられるのが「猫ひっかき病」だ。病原菌に感染した猫にかまれたり、引っかかれたりして感染し、傷口やリンパ節が腫れ、発熱などの症状を引き起こし、海外では死者が出たとの報告もある。国内の死亡例はないが、急性脳症に至ったケースがあるという。

 毎年十数例を治療するという吉田さんの調査では、病原菌を持つ猫ノミが繁殖する7月に患者が増え始める。子猫が増える10月ごろにピークを迎え、寒さが増す12月に終息する傾向がある。男性は20代以下が多く、女性は40代が大半を占める。吉田さんは「若い男性は猫の扱いが乱暴になりがち。40代の女性にはペットに長時間接する主婦が多い。いずれも引っかかれやすいということではないか」と分析する。

 感染を防ぐにはどうすればいいのか。吉田さんは「猫を清潔にすることが最も大切」と指摘し、駆除薬などによるノミ退治を第一に説く。症状が表れた場合は、医師に「最近引っかかれた」「家で猫を飼っている」など猫とのかかわりを説明することも重要という。

 ■カプノサイトファーガ・カニモルサス

 近年は猫と犬の口の中にいる「カプノサイトファーガ・カニモルサス」という細菌の感染症も報告が増えている。犬は7割以上、猫は5割以上が持つとされる細菌で、感染力は弱いが、発症すると敗血症などでショック症状を引き起こし、急激に重症化する。発症のメカニズムははっきりとしないが、これまで国内では02年以降14人が発症し、うち6人が死亡している。

 神戸市立医療センター中央市民病院では、07~08年に4人の患者が運び込まれ、うち2人が敗血症で死亡した。検査を担当した同病院臨床検査技術部の三木寛二副技師長は「血液検査で容易に感染の有無は確認できる。犬や猫にかまれたり、引っかかれた時は、すぐに病院で検査をしてほしい」と呼びかける。

 ■オウム病

 ペットとして人気の高い鳥から移る感染症もある。オウム病は、感染した鳥のふんを吸い込むことで発症する病気だ。ほとんどの鳥類が感染する危険性を持ち、診断した医師は保健所への届け出が義務づけられる4類感染症の一つだ。昨年1年間に全国で21例、例年でも数件から数十件の患者が報告されている。

 東大阪市では、04年に2家族3人のオウム病患者が発生した。患者らは当初、いずれも風邪やインフルエンザなどが疑われた。投薬治療が行われたが、なかなか回復せず転院。その後にいずれも自宅で鳥を飼っていることが分かり、ペット感染症が疑われ、検査でオウム病と診断された。

 国内では複数の自治体が、家庭で飼育されている鳥が持つ病原体の保有データを集めている。東大阪市でも、これまで市内の獣医師会に協力を仰ぎ、犬と猫を中心に複数のペット感染症について飼い主の了解を得ながら病原体の保有状況を確認している。

 オウム病についても、患者発生前の03年から継続的にデータを集めている。昨年度までに約180羽を検査した結果、約2割にあたる35羽が陽性だった。患者は子どもより大人の割合が多い。東大阪市保健所の松田健治主査は「鳥は、かごの中から逃がすと大変なので、子どもより大人が世話をするケースが多いからではないか」と推測する。

 松田さんは「ちょっとしたことで感染は防止できる」と話す。オウム病は、ほこりとして舞い上がった乾燥したふんを吸い込むことで感染する。「まずはこまめにふんの始末をすること。もちろんマスクをすることを忘れないで」と話す。他にも、▽十分に換気をする▽口移しでえさをやるなど過度な接触を避ける▽世話をした後に手洗いを徹底する--なども重要だ。

 

※毎日新聞 2010年6月25日 東京朝刊

 医療機関で処方された向精神薬を飲んで自殺を図る人が増えている問題で、厚生労働省は、処方する際に長期、多量となるのを避けるなど細心の注意を払うよう日本医師会(日医)などの関係団体や自治体に通知した。厚労省によると、国が自殺予防の観点から医療機関に向精神薬の過量投与に注意を促すのは初めて。

 通知は24日付で、都道府県や政令市のほか、精神医療にかかわる日本医師会、日本精神科病院協会、日本精神神経科診療所協会など8団体の責任者にあてて出された。

 厚労省研究班が遺族との面接を通じて自殺者76人について調査したところ、半数が死亡前の1年間に精神科か心療内科を受診。このうちの約6割が、直接の死因でない場合も含め、処方された向精神薬を自殺時に過量服薬していた。

 通知はこうした調査を基に、患者が自殺する可能性を考慮して向精神薬の投与日数や投与量に一層の配慮をするよう求めている。

 

※毎日新聞 2010年6月26日 東京朝刊


 英国では、専門機関「NICE(ナイス)」が薬や検査の費用対効果を算出。推奨されたものを公的医療で提供します。ただ、問題もある。推奨されないと、患者が薬を使えなくなるからです。

 日本で保険適用されているベバシズマブ(アバスチン)は、英国では公的医療でカバーされません。NICEが使用を「推奨しない」としたからです。アバスチンは1QALY5万ポンド以上です。

 メーカーはもちろん、患者団体も反対した。やはり効くんです。効かないわけじゃない。ただ、効果が公費医療に値しないのです。

 使用が否定された薬の中には、予後の悪いがんに使われる抗がん剤もあります。確かに、こうした薬をほかの薬と同様に評価するのは難しい。生存期間を数カ月延ばすのに多額の費用がかかる。

 このため、NICEは患者が(1)予後が24カ月未満(2)ほかの治療法がない-などの場合、身体状況が完全でなくても、健康とみなして評価するようになりました。こうして、腎細胞がんの治療薬「スニチニブ(スーテント)」は英国でも公費医療になりました。

 また、使用が推奨されなくても、患者が薬を使える仕組みを導入しました。例えば、多発性骨髄腫の薬「ボルテゾミブ(ベルケイド)」は患者が部分的にでも治癒しなければ、メーカーがその分を国に払い戻す。非小細胞肺がんの治療薬「エルロチニブ(タルセバ)」は、「別の抗がん剤と同額程度なら使用を推奨する」としました。

 「効果に比して高すぎる」から超過分をメーカーが払えば、公費医療にするというわけです。(談 福田敬・東京大学准教授)

 

※MSN産経ニュース 2010.6.25 08:30

英国では、医療費に患者の自己負担がありません。政府は専門機関「NICE(ナイス)」に薬や検査の費用対効果を算出させ、公費に見合う効果がなければ税で賄わない決断をします。

 大事なのは、そこで考慮されるのは単に費用ではなく、効率だということです。1人にかかる医療費や薬の値段ではなく、費用に見合う効果の有無。安くても効かなければ意味がないし、高くてもがんが治るなら、みんなで払いましょうということです。

 例えば、乳がんの薬「トラスツズマブ(ハーセプチン)」。日本では薬代が1人年間約320万円かかる。患者負担は高額療養費制度がききますから、もっと安いですが、かなりの医療費です。しかし、この薬でがんの再発が抑制でき、平均して1年数カ月の生存延長が期待できる。NICEの評価では、1QALYが1万8千ポンド。この薬を使えば、追加の1万8千ポンドで健康に1年長く生きるのに相当する価値が得られるという意味です。NICEは「推奨に値する」と結論付けました。見合う効果があるわけです。

 日本では従来、あまり費用対効果を考えず、新薬を公費で賄ってきました。承認された薬は保険適用され、安く使用できる。とても良い仕組みで、一つの理想です。ただ、その場合は生じる医療費をすべて負担しなければならない。自己負担の3割は既に限界ですから、保険料か税金を上げるしかない。「保険料がどんなに上がってもかまわない」とするのは、一つの考え方です。しかし、現実には難しい。技術進歩で医療費は増えている。新薬の効果を考える時期に来ていると思います。(談 福田敬・東京大学准教授)

 

※MSN産経ニュース 2010.6.18 08:12

イギリスの医療費は全額、税で賄われ、患者の自己負担はありません。ただ、医療費増は先進国共通の課題です。イギリスでは専門機関「NICE(ナイス)」が新薬の費用対効果を算出。政府に費用対効果に優れた薬を「推奨」し、政府はそれを公費医療に採用します。

 イギリスの医療サービスは当初、「すべての治療を無料で」が方針でした。それが「すべての有効な治療を無料で」になり、「すべての効率的な治療を無料で」に変わってきています。

 財源に限りがあるからです。費用だけでなく、病院や医療提供者の数も限られている。だから、何を優先すべきかを考える。税金を使う以上、明確なルールが必要ですから、経済評価のガイドラインを作って、費用対効果を算出しています。

 費用対効果の算出に使用されるのは、QALY(クオリイ)という単位です。「1QALY」は、人が完全な健康体で1年を暮らすことに相当する価値を表します。新しい治療法を使うことで、1QALY増加するために必要なコストが2万~3万ポンド以下なら、薬や検査を公的医療にすることが推奨されます。貨幣価値を考慮すると、350万~520万円程度です。豪州もカナダも、日本にならって皆保険を導入した韓国も費用対効果の算出にQALYを使います。

 イギリスはかつて、手術を受けるのに長い待機者リストがあったり、年度末になると手術ができない時代もあったので、お金をつけるところを考え、優先度の高いものからやっていくということが比較的、受け入れられやすいのかもしれません。(談 福田敬・東京大学准教授)

 

※MSN産経ニュース 2010.6.11 08:03

イギリスの医療は国営です。医療費は税金で賄われ、日本のような自己負担はない。だから、税金の使い方は効率的であるべきだという考え方があります。

 英国政府は1999年、治療方法を推奨する専門機関「NICE(ナイス)」をつくり、国が提供する薬や検査に有効性、効率性が加味される仕組みになりました。NICEの代表的な仕事は薬や検査、治療技術などの経済評価。費用対効果を計算し、公費での医療提供について、(1)推奨(2)一部制約付きで推奨(3)全く推奨しない-などの結論を出します。

 例えば、英国ではインフルエンザの治療薬オセルタミビル(タミフル)やザナミビル(リレンザ)は特に基礎疾患のない成人や子供への使用が推奨されていません。一日早く治る薬剤としては費用が高く、「公費投入に見合わない」という結論です。ある個人には、その一日はとても重要かもしれませんが、税金を使う治療としては見合わないと。

 ただし、成人や子供でも循環器、呼吸器、糖尿病の疾患がある人や高齢者には使用が推奨されています。治療経過が悪く合併症で肺炎などを起こす危険があり、その分、医療費がかかるからです。とはいえ、英国でも新型インフルエンザにはタミフルやリレンザを広く使ったようです。新型の危険性が不明だったことや、防疫の意図があったのかもしれません。

 NICEの判断は決定でなく、あくまでも推奨。使用の最終判断は臨床医に委ねられます。ただ、非推奨の薬を使えば理由を求められる。病院も費用が支払われなければ困る。推奨されなければ使えないのが現実のようです。(談 福田敬・東京大学准教授)

 

※MSN産経ニュース 2010.6.4 07:47